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2011年09月17日

「かちかち山」は残酷か?パート2

 今回は、昔話の研究家の小沢俊夫氏の解釈をお伝えしたいと思います。小沢さんは、1988年に絵本「かちかちやま」を再話され・赤羽末吉 画・福音館書店より出版されています。
『かちかち山』の解釈を『日本の昔話1 はなさかじい」1995年福音館のあとがきより
☆「このエピソードは、自然に囲まれて暮らしていた人間が同じ自然の中に生きている動物と、まず土地の支配権争いをし、そのうえ、食うか食われるかの、自分の存在をかけた戦いをしている物語なのです。人間は自分の生命を維持するためには、他の生物の生命をもらわなければなりません。ところが人間も動物の一種なので、他の動物に生命を奪われることだってありうるわけです。「かちかち山」はそういう厳しい生活の中で生まれた、シリアスな物語なのです。生命はどうやってなりたっているか、という根本問題を語っているといえます。
Mさんからいただいた資料・小沢氏の『昔話の世界』より
☆ [前半部にあたる「たぬきの婆汁」の話は残酷すぎるとしてカットされることが多いのですが、私の考えでは、これも日本の昔話の基本的構造を持っている重要な部分なのです。・・・こういう文明化された世の中だからこそ、生命をめぐる真相を単純なストーリーにして聞かせる昔話が重要なのだと思います。]途中省略
[昔話は、状況の描写をせずに、早いテンポでゴールに向けて話の筋を進めていきます。そのゴールとは、ほとんどの場合
主人公の幸せ、主人公の安全なのです。「カチカチ山」の場合は、主人公の安全といえるでしょう。なぜなら、もしたぬきがまだ生きていたら、いつかまた山の畑に現れて、爺のの仕事のじゃまをするかもしれないのですから。]と結んであります。
ー昔話の中で、残酷といわれている事が、人間が生きていくうえでの大切な知恵であり、生き抜いていく力を教えてくれている・・・だとするとタヌキは婆に怪我をさせただけで、
のちに改心して爺と婆に謝ってめでたしめでたしという、生ぬるいストーリーでは、生きていく厳しさも、自分の力の及ばない自然の厳しさも伝えた事にはならないのですね。
次回は心理学者の河合隼雄氏の解釈をご一緒に!
            思い出絵本展実行委 あっこたん

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by 思い出の絵本展 実行委員会 at 21:24 │●絵本のハナシ
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